講師業をされている方の中には、このようなお礼メールを送ったことはありませんか。
本日は●●セミナーにお越しいただき、ありがとうございました。
復習用として動画をお送りしますので、ぜひご覧ください。
何か、気になった点はありましたでしょうか。
「~~にお越しいただき、ありがとうございました。」
実はこれが、今回のテーマになります。
どこが問題か、お気づきでしょうか。
講師の方だけでなく、サロンのセラピストさんであれば、「本日は○○サロンにご来店いただきまして、誠にありがとうございました。」とか、「この度は、ご予約いただき、ありがとうございます。」と予約を承った段階でも使っているかもしれません。
これに似た表現として、このような文章を見たことはないですか。
「本日はご来店くださいまして、誠にありがとうございます。」
「昨日はご受講くださり、ありがとうございました。」
~~いただき、なのか、~~くださり、なのか。
そんなこと、考えたことない!!!という方も多いような気もしますが、これはどういう意図を持った文章なのかということをきちんと理解していれば、間違った言葉の使い方って妙に気になるものなんです。
悪気があるとかないとかっていう話じゃなくて、「あぁ、言葉を知らないんだな」という感覚ですね。
しかも厄介なことに、これを指摘してくれる人もそうそういません。会社の先輩が正しい使い方をしているとも限らないからですね。
個人事業主となると、さらに誰も教えてくれません。
提供するサービスが素晴らしくても、基本的なやりとりで「言葉を知らない人」と思われると、ちょっと幼稚さが透けて見えるんですね。
その道のプロを名乗り、先生として人前に立つのであれば、こういった日常的に使う文言は、正しい言葉遣いをしていきましょう。
「いただき」と「くださり」の使い分け
では、本題です。~~いただき、なのか、~~くださり、なのかを見ていきます。
「いただく」は「もらう」の謙譲語
「くださる」は「くれる」の尊敬語
です。
言葉の確認は主語があった方がわかりやすいので、例文を挙げますね。
(1)田中さん、セミナーを受講してもらって、ありがとう!
(2)田中さん、セミナーを受講してくれて、ありがとう!
はい、これで一目瞭然ですね!
(1)がおかしいのは言うまでもありません。
ということで、お礼メールでは、「本日はご受講くださり、ありがとうございました。」が美しい日本語ということになりますね。
もう少し解説します。
「いただく」は、自分が受け取る際に使用し、「くださる」は相手が与える際に使う言葉で、それに対して感謝や尊敬の気持ちを込めて受け取る姿勢を表します。
「先生から本を送っていただいた(主語は「私」なので、謙譲語の「いただく」)」
「先生が本を送ってくださった(主語は「先生」なので、尊敬語の「くださる」)」
という感じです。
では、次の例文はどうでしょうか。
(1)お読みくださり、ありがとうございました。
(2)お読みいただき、ありがとうございました。
これ、どちらにするか迷うという声がよく私のところに届きます。文法的にはどちらも間違いではなく、どういう状況かというのがポイントなんですね。
(1)は、「読んでくれて、ありがとう!」を敬語にした形です。一般的にはこちらが多用することになるのではないでしょうか。「あなた」が「読む」という行動を「してくれた」ことに、お礼を述べています。
では、(2)はどういうときに使うと思いますか。「いただく=もらう」なので、自分が読んでもらう…例えば、目が悪いから代わりに読んでもらったときに、「お読みいただき、ありがとうございました。」と言う感じですね。「私」が「読む」という行動を「してもらった」ときです。
では、「受講して~~」の話しに戻りますが、受講者さんがセミナーを受けるという行動をしたことに対して、お礼を述べています。
「セミナーを受講してくれて、ありがとう!」ということですね。
こう書くと、お客様を下に見ているように受け取られては困るので、補足をします。
お客様への言葉遣いは尊敬語がスマート
基本的にお客様に対する言葉遣いは、尊敬語を使う方がスマートだと私は思います。
なぜなら、『お客様の行動』と『自分の行動』を比較したら、圧倒的に敬語を使うべきは、『お客様の行動』に対してだからだと考えているからです。
そういう目線で考えても、謙譲語と尊敬語のどちらを使うかといったら、間違いなく私は『お客様の行動に対して尊敬語を使う』の一択です。
このような言葉遣い(特に敬語)に関して迷ったら、ネットで検索するのが一般的だと思うのですが、
「ビジネスでは、~~いただき、にしておくのが無難!」
と書いてあるものもありますし、
「いただくとくださるは、謙譲語か尊敬語かの違いだから、どっちでもいい」
なんていうサイトもありました。
相手がくれるということは、自分がいただくことになるので、どちらでも同じという主旨です。
ネット上の記事は、ほとんどは校正されません(結構、誤字脱字の多い記事が目立つなぁと、個人的に思って見ています)。
書きたいように書けるので、そういう意味では、このブログも疑ってみてもらって構いません。笑
時代の流れに合わせて言葉も変化するとは言われています。
アナウンサーであっても例えば二重敬語を使うなんて、今ではよくある光景です。
できるだけ美しい日本語を使えた方が、それ以外のところでもきちんとした印象を受けますので、人間関係を構築するためには欠かせない言葉遣いは、書き言葉・話し言葉ともに気をつけて使いたいと思います。
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