テレビのインタビューやトーク番組を見ていて、ふと「あれ?」と違和感を覚える瞬間はありませんか。
特に、タレント同士の会話でよく耳にする「あるフレーズ」が、実は日常のコミュニケーションにおいても、相手にストレスを与える原因になっているかもしれません。
今回は、相手との信頼関係を築くための「正しい会話のキャッチボール」について深掘りします。
相手の質問を「否定」から始めていませんか
よくある会話のシーンを思い浮かべてみてください。
質問者:「何か最近、失敗談はありますか?」
回答者:「失敗談じゃないんですけど、この前大阪に行ったときにね……」
一見、スムーズに会話が続いているように見えますが、ここに大きな「落とし穴」があります。
質問者は「失敗談」というボールを投げたのに、回答者はそれをキャッチせず、勝手に別のボール(大阪の話)を投げ返しているのです。質問された側からすれば、「失敗談はないから、別の面白い話をしよう」という親切心かもしれませんが、質問した側にしてみれば「自分の質問が一方的に否定された」という微かな拒絶感やモヤモヤが残ります。
「大変だったこと“では”ないんですけど」の微かなトゲ
同様のケースは他にもあります。
質問者:「撮影で大変だったことはありますか?」
回答者:「大変だったこと“では”ないんですけど……」
この「では」という助詞一字が入るだけで、会話にトゲが生まれます。無意識に「あなたの想定している『大変』という枠組みには当てはまりませんよ」という、一種の牽制(けんせい)のように聞こえてしまうのです。
会話はよくキャッチボールに例えられます。ボールを受け取らずに、横から別のボールを投げつけるのは、キャッチボールではなく「ドッジボール」になってしまっています。
安心感を生む「一旦受け止める」という技術
では、どう話せば相手に安心感を与え、スマートな印象を持たれるのでしょうか。ポイントは、「まず、相手の投げたボールをグローブに収めること」です。
改善例
質問者:「失敗談、何かありますか?」
回答者:「失敗談は、ありがたいことに今のところはないのですが、実はこんな珍しいことがあって……」
改善例
質問者:「撮影で大変だったことはありますか?」
回答者:「大変だと感じることは特にありませんでしたが、すごく印象に残っているエピソードならありますよ」
このように、まずは相手の問いに対して「ある・なし」の結論を一旦きちんと答える。 これだけで、会話の丁寧さは格段に上がります。 「あなたの質問を正しく受け取りましたよ」というサインを送ることで、相手には「自分の話を聞いてくれている」という信頼感と安心感が生まれるのです。
ビジネスや日常で活かせる「受容」のメリット
この「一旦受け止める」姿勢は、仕事やコミュニティの人間関係においても非常に強力な武器になります。
- 信頼関係の構築: 相手は「自分の意図を尊重してもらえた」と感じ、心を開きやすくなります。
- 誤解の防止: 結論を先に述べることで、会話の着地点が明確になり、情報の食い違いを防げます。
- 知的な印象を与える: 質問に真正面から答える姿勢は、誠実さと余裕(思慮深さ)を感じさせます。
まさに、前回の記事で触れた高橋一生さんのような「知的な大人」の振る舞いにも通じるものがあります。

結論:会話の質は「受け止め方」で決まる
相手への配慮や思いやりは、難しい言葉を使うことではありません。「聞かれたことに、まずは一旦答える」という、ほんの些細な積み重ねにこそ宿ります。
投げる前に、受け止める。 このシンプルなルールを意識するだけで、あなたの会話はもっと心地よく、もっと深く相手の心に届くようになるはずです。



